何から伝えればいいのか分からないまま時は流れて 浮かんでは 消えてゆく
ありふれた言葉だけ・・・。
数日前、突然私は、
心揺すぶられる人に出会いました。
その方は、
ずばり、
ドロボーさん。
その日は朝から雨でした。
研究所の自室でボスとディスカッションしたあと、ボスは別の部屋に行った。
あージメジメしててやだなーと思いながら、私はコーヒーを飲みにいった。このとき午後4時半くらい。
コーヒー飲み場への廊下の途中にはボスの部屋があり、
ドアが開いてたので何気なく覗いてみたら、
知らない男が、
ガサゴソなんかやってる!
見た目、
ジャンキーだ。20代後半か。
んん!!と思ってボス部屋に入り、
「おまえ、何してんだ?」
ってたずねると、
「
Nothing(なにもしてない)X 2回」
と言っている。
普通
んなワケねーだろ。書類が床に散乱してるし。
そしたらその人が部屋から廊下に出たから
「おいおい、ちょっとまて、何してんだ!」
っと言って問いただす。
だんだん
オレは興奮してきた。脳内から吹き出たアドレナリンを全身にまとった。血糖値の上昇を感じた。彼の動き全てを捉えるため、瞳孔が全開した。全てがスローに見えた。毛は逆立っていた。
気分はスーパーサイヤ人かキャプテン翼である。
その瞳孔全開の目で彼のジーンズのポッケを見たら、レザー製の薄いケースっぽいのが見えた。
やはり物取りか。もう確信した。
で、
「それなんだ?」
って聞いたら、
「
That's mine(これオレの)X 2回」
という。
「じゃ見せろ!」
っていうと、
「That's mineX 2回」
っていいながら
素直にオレにブツを見せる。
それはボスの小型のPCハードディスクであった。私はそれに見覚えがあったのだ。
「いいや、これはボスのだ!」
と言うと、
「
No〜That's mineX 2回」
と言いながら、
オレに手渡す。
大体さー、
君のならオレにくれなくていいじゃん。
しかも、全ての言葉が
2回連呼してるところで君は終わりだよ。
取り押さえようか?オレ、キックには自信があるなー。なんて考えながら、まじまじそのドロボーを見ると、
チョー
でっかい。身長190cm以上はあろうか?ガタイもいい。筋肉質だ。
そしてなによりジャンキー(風)だ。
これじゃぁ
曙と舞の海の対戦だよ。しかも曙はジャンキーときた。
だれがそんな曙を止められよう。
(ちなみに曙さん、インリン様から生まれてる場合じゃないでしょ。でも応援してます。)
これはまともにやったら、
返り討ちだなって判断したあるよ。
いま廊下には誰もいない。そこで、「ちょっと待て」といいながら向かいのドアを開けて、他の研究員を呼ぼうとした。
しかし、
こんなときに限って、
だ、誰もいない・・・。おおぉぉーやべー なんて思ってたら階段の方へドロボーは逃げるように去っていく。
「ちょっと待ってーーー!!」
ってオレが叫ぶと、階段からあがって来る別の教授が’何事か?’という顔でオレと目があった。ドロボーはその教授の真横である。
でオレは、
「その人怪しい!X2回」
と、ついつい興奮して連呼してしまった。
が、ドロボー逃げ足早く、研究所の外に止めておいたチャリで逃げ去ってしまった・・・。
こういった状況は、なかなか味わえるものじゃない。しかも突然訪れる。
なぜか「東京ラブストーリー」の主題歌を思い出す。
君があんまり素敵だから、ただ素直に戦えなくて、多分もうすぐ雨もやんで、二人たそがれ・・・。
あの日、あの時、あの場所でコーヒー飲みに行かなかったら、僕らはいつまでも〜見知らぬ二人の・・・まま・・(遠い目)。
(ドラマでは最後の”ま”がやけに響くんだよね。え?マニアック?みなさん知ってるよね?)
とにかく、魂揺さぶる出来事であった。
結局、研究所内で取られたものは、同僚のiPodだけだったようだ。
ボスの部屋内のノートパスコン(ラップトップ)は盗難防止用の鎖でつながれてたが、それを無理やり引きちぎろうとした痕跡があった。しかし無事であった。
小型ハードディスクも取り戻せたし、ま、ボスのデータを守ることができたと言えよう。
よし、これをネタに、給料あげてもらおう。
え、セコイ?
あのねー、こちとら泥棒同様、
生きてくのが精一杯なんだってばよ!